川和田 クラスにいる他の子どもたちと同じように生まれて育ってきただけなのに、自由、将来の可能性が制限されてしまっている子どもたちがいること。
それを深く心に残るよう伝えたいと思っていたからこそ、家族や友人と過ごす時間のかけがえのない瞬間を大切に描き、何が失われてしまうのかを映し出したいと思いました。
例えば、家族でラーメンを食べたり、はじめて自分の内心を人に打ち明けたり、絵を描いているときに雨に降られてしまったり……
そんな人生で通り過ぎていくけど二度と訪れないような時間の豊かさの見せ方にこだわりました。
また、映画を通して違うバックグラウンドを持つ人たちの背景にある物語を擬似体験することで、実生活で見知らぬ他人の立場への想像力が広がるようになってほしい、なと。そんな世界の見つめかたの変化のきっかけになってほしい、と希望も込めて一つ一つのシーンを考えていました。
 
  Q  主役の女子高生サーリャ役に嵐莉菜(あらし・りな)さんや彼女の家族を起用した経緯を教えてください
 
川和田 当時、劇映画に出演できるビザを持っている方が、クルド人の若い世代にはいませんでした。また、皆さん難民申請中であったので、映画のメッセージを背負って顔を出して出演することにはリスクが高すぎると判断しました。そこで様々なルーツを持っている方々にお声かけしてオーディションを行い、その中で嵐莉菜さんと出会いました。
面接で、彼女が「自分が何人かわからないが日本人と言いたい」と言ったときに今回のサーリャ役を任せられると思いました。
サーリャはまだ自分のアイデンティティに対して葛藤がある人の方が理解しやすい役だと考えていました。
お芝居も堂々と演じてくれて素晴らしい存在感でした。
実は家族での出演は考えていなかったのですが、ご家族もそれぞれご応募いただいて、オーディションをした結果、
莉菜さんの感情を最も引き出してくれるのはご家族だと感じたのでお願いすることにしました。
元々姉妹の設定で書いていましたが、それぞれのキャラクターに合わせて脚本を大幅に書き直しました。
  
  Q  川和田さんも嵐さんも外国にルーツをお持ちです。我々の日本語教室も子どもクラスがあります。アイデンティティに悩む外国ルーツの子供達にどんなアドバイスをされますか
 
川和田 外国人だと指を刺されて嫌だ、自分は宇宙人なんじゃないか、みんなと同じになりたい、言葉がわからないからって悪口を言われているような気がする、親のことをクラスメイトに馬鹿にされているようで恥ずかしい、お弁当がみんなと違って笑われた、、、などなど、色々な悩みがあると思います。
私が子どもだった頃から比べて世界はほんの少しずつ変わっているように思いますが、大きくは変わってないのではないでしょうか。みんな違ってみんないい。ルーツが個性的な自分を愛せればいい。本当にそうです。
もちろんそう思うのですが、そういう綺麗な言葉を許さないくらい、目の前に迫ってくる現実の生活は優しくないし遠慮ないですよね。
正直に言って、大人になっても、しつこいくらいに同じような経験をします。
それでも、変えられることもあります。自分自身の受け止めかた、向き合いかたです。
すべての人に自分への理解を求めることは難しいし、相手に求めすぎてしまうと、わかってくれないことに自分自身がとても疲れます。
でも、自分にとって大事だなって思う人や、関わり続けたいと思う人には、自分が嫌なことを伝えてみる。
どう受け取ってくれるかは分かりません。でも、よく言えたな、って自分を褒めてあげる。少し誇らしくなる。
そういうふうに自分を大切にできると、自分を大切にしてくれない人のことが自然とどうでもよくなっていきます。
同時に、向き合って聞いてくれる人の大切さも痛感します。
大事な自分の人生です。傷つけてくる言葉や自分を雑に扱う相手に全部向き合って自分自身をすり減らす必要はないと思います。
正しい方法ではないのかもしれません。でも、ルーツのことに限らず、生きかたを楽にするひとつのアイデアとして。
 

Q  いま関心のあるテーマ、今後の作品の構想などがあれば、教えてください

川和田 現在は、マイスモールランドとは視点を逆にして、マイノリティになっている日本人の視点からの作品を考えています。心の揺らぎを撮ることに興味があるので、今後も繊細さを大事にしたいと思っています

   Q HIF のボランティアに励ましのメッセージをひと言お願いします。
 

川和田 皆さんの存在が、ヘイトや分断を埋める大きな希望だと感じます。
生活もある中で活動する、それだけで大変だと思いますし、ご自身の困難を抱えながら活動されている方もいらっしゃるかと思いますが、未来をつくる子どもや共に暮らす生活者である大人たちを支えている皆さんのこと、心から尊敬しますし、これからも応援しております。